これからの日本に必要な同一労働同一賃金の考えと変革

提案
仕事をした分だけお金をもらう。当たり前のような話ですが、それを徹底している企業というのは意外なほど少ないものです。
賃金は労働者のモチベーションに直結し、ひいては組織全体の生産性にまで影響の及ぶ問題となっています。
そこで、同一労働同一賃金という考え方が注目を集めており、様々な企業で取り組みが推進されています。

同一労働同一賃金への取り組みには様々な障壁がありますが、将来的な組織の成長のためには必ず乗り越えていかなければなりません。

同一労働同一賃金という考え方

同一労働同一賃金という言葉が示す意味は、「役職や雇用形態に関わらず、同じ仕事量なら同じ賃金を与えるようにしましょう」という考え方です。
一見すると「当たり前の話」に感じられる問題ですが、古くから差別的な待遇を受けた労働者による運動が活発化していった中で、現在この同一労働同一賃金が徹底されている企業というのは、決して多くありません。

特に日本では90年代半ばから派遣社員やアルバイト、パートといった非正規雇用が急増し、それに伴って正規雇用と非正規雇用との賃金の格差が取り沙汰され、世間でも大きな波紋を呼びました。
労働に見合った賃金が得られないと、労働者のモチベーション低下につながり、更に求人難によって新しい人材が生まれなくなるという悪循環が生じます。
それを是正する為に提唱されたのが、同一労働同一賃金という考え方です。

正規雇用と非正規雇用の格差

現代の日本においても、正規雇用と非正規雇用で賃金の格差が埋められないでいる現状があります。シンプルに考えれば、この格差を「なかったこと」にすれば解決しそうな問題ではあります。
しかし、勤続年数や年齢、各種手当等によって給与が決まる正規社員と、働いた時間数に応じて給与が決まる非正規社員を、全くの同待遇にするのは簡単ではありません。
正規雇用には「責任」が生じ、それに対する精神的負荷も給与に含まれているという考え方もあるため、双方の意識の違いを単に同一労働同一賃金という言葉で埋めるのは容易ではないのです。

そんな実情から、同一労働同一賃金は様々な企業で取り組み始めている問題ではありますが、業務の評価基準をどこ置くかも含めて、依然として意見が平行線を辿っています。

技能や役職の違いによって賃金に違いが発生するのは当然です。しかし、それと関係なく正規雇用と非正規雇用という違いだけで賃金格差が生じるのは合理的とはいえませんね。
あくまで、労働者が成果として挙げている労働の内容によって賃金を決めるべきではないか、というのが同一労働同一賃金の大きな要点となっています。

従来、性別や国籍によって理不尽な賃金格差が設けられている企業は珍しくありませんでした。
女性や外国人等、業務の遂行能力や成果に関わらず、不当に低い賃金で雇用されていたのが、以前の日本社会です。
それも含めて是正しようという動きが活発になり、同一労働同一賃金という言葉が生まれるきっかけにもなったのです。

厚生労働省の取り組み

深刻化する賃金格差に対し、国は何もせず手をこまねいているだけではありません。
厚生労働省が2016年に同一労働同一賃金に関するガイドライン案を作成しました。

例えば、非正規雇用だと支給されないことが多い賞与に関しても正規雇用と同様に支払うべきといったものが、このガイドラインに記述されています。
賞与だけでなく、正規雇用のための福利厚生施設に関しても、非正規雇用の方に提供するよう呼びかけています。
しかし、あくまでガイドラインであって法令ではないため、それに従うか否かは企業側の判断にゆだねている部分が大きいのが現状です。